英語の「th」の音、苦手な方多いですよね?「ス」とか「ズ」になっちゃう…なんて声、よく聞きます。でも大丈夫!この記事では、歯科音(Dental Consonants)と呼ばれる /θ/(無声音)と /ð/(有声音)の音の出し方を、現役英語講師の経験を元に、分かりやすく、そして実践的に解説します。この記事を読めば、もう「th」の音で悩むことはありません。さあ、一緒に「th」マスターへの第一歩を踏み出しましょう!
なぜ「th」の音は難しい?:日本語にはない音
まず、なぜ私たちが「th」の音に苦労するのか、その根本原因からお話ししましょう。それは、日本語の音体系には /θ/ と /ð/ の音が存在しないからです。例えば、「thank you」を「サンキュー」、「this」を「ディス」と発音してしまうのは、無意識のうちに母音や似た音で代用しているからなんですね。これは、言語学でいう「音の置き換え(Substitution)」という現象です。多くの英語学習者が陥りやすい、ごく自然なことなんです。
日本語の音との比較:違いを理解する
日本語で「th」に近い音として、例えば「サ行」の /s/ や「ザ行」の /z/ を思い浮かべるかもしれません。しかし、これらの音と /θ/、/ð/ の決定的な違いは、**舌の位置と空気の流れ方**にあります。/s/ や /z/ の音は、舌先を歯の裏側に近づけて、隙間から息を出すことで作られます。一方、/θ/ と /ð/ は、もっと大胆に舌先を歯の前に出すのが特徴です。
学習者の声:よくある間違いと悩み
私の生徒さんからも、こんな声がよく聞かれます。
- 「"think" がどうしても "sink" に聞こえちゃうんです…」
- 「"mother" を言おうとすると、舌を噛みそうになります。」
- 「"three" を "free" と間違えられて、ちょっと恥ずかしい思いをしました。」
これらの悩み、すごくよく分かります!私も学生時代、何度も鏡の前で練習したものです。でも、正しい方法を知れば、必ずできるようになりますよ。焦らず、一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
/θ/(無声音):息だけの「th」
まずは、声帯を振動させない「無声音」の /θ/ からマスターしましょう。これは、"think"(考える)、"three"(3)、"path"(道)などの単語で使われます。この音のポイントは、**「息だけ」**で音を出すことです。
実践!/θ/ の発音方法
さあ、実際にやってみましょう!
- 舌の位置: 軽く上の歯の裏側に、舌先をそっと当てます。出しすぎず、引っ込めすぎず、ちょうど良い加減を見つけてください。
- 息の流れ: 舌先を歯から少しだけ離し、その隙間から「スーッ」と息を吐き出します。この時、声帯は振動させません。声を出そうとすると、日本語の「ス」になってしまいます。
- 音の確認: 鏡を見ながら、舌先が上の歯の少し先に出ていることを確認しましょう。そして、声帯が震えていないか、首の前あたりに手を当てて確認してみてください。震えていなければOKです!
練習ドリル:/θ/ を含む単語
いくつか練習単語を挙げてみます。まずはゆっくり、舌の位置と息の流れを意識しながら発音してみましょう。
- think /θɪŋk/
- three /θriː/
- thank /θæŋk/
- thin /θɪn/
- path /pæθ/
- mouth /maʊθ/
これらの単語を、まずは単独で、次に簡単なフレーズで練習するのが効果的です。例えば、「Thank you very much.」(本当にありがとう。)や、「I think so.」(そう思います。)など。
よくある間違いと改善策
間違い: /s/ の音になってしまう。
原因: 舌が歯の裏側につきすぎている、または息を出すときに舌を離しすぎる。
改善策: 舌先を「軽く」歯の裏側に当て、息を「細く長く」出すイメージを持ちましょう。息だけで「シーッ」と音を出す練習を繰り返すのが効果的です。
/ð/(有声音):声も一緒に「th」
次に、声帯を振動させる「有声音」の /ð/ です。これは、"this"(これ)、"that"(あれ)、"mother"(母)、"brother"(兄弟)などの単語で使われます。/θ/ との唯一の違いは、**声帯を振動させる**こと。舌の位置や息の流れ方は、/θ/ と全く同じです。
実践!/ð/ の発音方法
こちらも、実際にやってみましょう。
- 舌の位置: /θ/ と同じく、軽く上の歯の裏側に舌先を当てます。
- 息の流れと声帯の振動: /θ/ と同じように、舌先を歯から少し離し、隙間から息を吐き出します。しかし、今度は**声帯を振動させながら**行います。首の前あたりに手を当てると、「ブーン」という振動を感じられるはずです。
- 音の確認: 鏡で舌の位置を確認し、首に手を当てて振動を感じましょう。声を出そうとするのではなく、「ズー」というような、喉の奥から響くような音をイメージしてください。
練習ドリル:/ð/ を含む単語
こちらも練習単語をいくつか挙げます。
- this /ðɪs/
- that /ðæt/
- the /ðə/ または /ðiː/
- then /ðen/
- mother /ˈmʌðər/
- brother /ˈbrʌðər/
- father /ˈfɑːðər/
「This is my mother.」(こちらが私の母です。)や、「That's the book I want.」(あれは私が欲しい本です。)のような短い文で練習すると、実践的です。
よくある間違いと改善策
間違い: /z/ の音になってしまう。
原因: 舌の位置が奥すぎる、または声帯の振動が強すぎる。
改善策: /θ/ の練習で習得した舌の位置と息の流れを意識しつつ、まずは「喉の奥から優しく」声を出す練習をしましょう。英語の "the" のように、非常に弱い音で発音されることも多いので、完璧に「ズー」と発音できなくても大丈夫。まずは、声帯が振動していることを確認することが大切です。
ケーススタディ:発音改善でスコアアップ!
私の生徒さんの一人に、塚本さん(仮名)という方がいました。彼はTOEICで700点台でしたが、リスニングとスピーキングのスコアが伸び悩んでいました。特に、"th" の音が聞き取れず、また自分で発音しようとしても、どうしても「ス」や「ズ」になってしまうとのこと。そこで、週に一度の発音クリニックで、この /θ/ と /ð/ の練習に特化したセッションを設けました。
Before & After: 具体的な変化
- Before: "Thank you" を "Sank you"、"This is" を "Dis is" と発音。リスニングでは、"three" と "free" の聞き分けに苦労していました。
- After (3ヶ月後): 舌の位置と息の出し方を意識することで、/θ/ と /ð/ の音が格段にクリアになりました。特に、"the" や "this" のような頻出単語の発音が改善され、リスニング力も向上。TOEICのリスニングセクションで約50点アップし、スピーキングセクションでも自信を持って発言できるようになりました。
塚本さんは、「最初は鏡の前で舌を出すのが恥ずかしかったけど、続けてみたら本当に変わった!」と喜んでいました。この経験から、発音練習は地道ですが、必ず成果につながるということを改めて実感しました。
効果的な練習方法と学習リソース
「th」の音は、意識して練習しないとなかなか定着しません。ここでは、私が推奨する効果的な練習方法と、信頼できる学習リソースをご紹介します。
実践的な練習のヒント
- ミラー・トレーニング: 鏡の前で自分の口の形や舌の位置を確認しながら練習しましょう。
- 録音・再生: 自分の発音を録音して聞き返すと、客観的に問題点が把握できます。
- シャドーイング: ネイティブスピーカーの音声を聞きながら、少し遅れて真似して発音する練習です。特に、"th" が含まれる文章で集中的に行いましょう。
- 単語リストの活用: 上記で挙げた単語リストや、ご自身が苦手とする単語を重点的に練習します。
- ペアワーク: 可能であれば、学習仲間と互いの発音をチェックし合うのも効果的です。
おすすめ学習リソース
発音学習に役立つリソースはたくさんあります。例えば、
- Cambridge Dictionary / Oxford Learner's Dictionaries: 各単語の発音音声(イギリス英語・アメリカ英語)が聞けます。発音記号も確認できるので、学習の基本となります。
- YouTubeチャンネル: "English pronunciation th" などで検索すると、多くの発音解説動画が見つかります。例えば、BBC Learning English や Rachel's English などは質が高いです。
- 発音矯正アプリ: 近年では、AIを活用した発音矯正アプリも登場しています。自分の発音をリアルタイムで分析してくれるので、一人でも効率的に学習できます。
これらのリソースをうまく活用し、毎日の学習に取り入れてみてください。5分でも良いので、継続することが大切です。
まとめ:焦らず、楽しみながら!
英語の「th」の音、/θ/ と /ð/ は、確かに多くの学習者にとっての壁です。しかし、今回ご紹介したように、舌の位置、息の流れ、そして声帯の振動というポイントを意識し、地道に練習を続ければ、必ず克服できます。塚本さんのように、発音改善がリスニングやスピーキングのスコアアップに繋がることも少なくありません。
大切なのは、完璧を目指しすぎず、少しずつでも進歩している自分を認めてあげること。そして、楽しみながら練習を続けることです。この記事が、あなたの英語発音学習の一助となれば幸いです。さあ、今日から「th」マスターへの道を歩み始めましょう!