「すごいね!」「よくやったね!」そんな風に褒められた時、あなたはどんな風に返事をしていますか? 英語で褒められた時、どう返せばいいか迷ってしまう…そんな経験、ありませんか? 実は、褒め言葉を素直に受け取って「ありがとう」と返すことは、コミュニケーションを円滑にし、自信をつけるための大切なスキルなんです。
このブログでは、英語学習者が陥りがちな「褒め言葉への苦手意識」を克服し、自信を持って「Thank you」と言えるようになるための具体的な方法を、私の教え子たちの経験談や実際のレッスンから得た知見を交えながら、わかりやすく解説していきます。さあ、一緒に褒め言葉を味方につけましょう!
なぜ「ありがとう」が英語で言えないのか? 学習者のリアルな声
「英語で褒められても、なんだか照れくさくて…」「謙遜するのが当たり前だと思っていた」「なんて返せばいいか分からず、固まってしまった」… これ、私が長年英語を教えてきて、多くの学習者さんから聞く声です。特に、日本語では「いやいや、そんなことないですよ」と謙遜するのが美徳とされる文化があるからか、英語圏のストレートな褒め言葉に戸惑ってしまうのは、無理もないことかもしれません。でも、その「ありがとう」を言えないことが、実はもったいない機会損失になっているんです。
例えば、私の生徒さんの一人、田中さん(仮名)は、プレゼンテーションが得意で、いつも熱心に準備していました。ある時、国際会議で発表する機会があり、見事に成功させたのです。終了後、参加者から「素晴らしい発表でした!」「とても勉強になりました!」と次々と声をかけられました。しかし、田中さんは「いえいえ、まだまだです…」と、いつもの癖で謙遜してしまったそう。後で「あの時、もっと素直に『Thank you. I’m glad you liked it.』って言えていたら、もっと自信になったのに…」と悔しそうに話していました。彼女はTOEICで800点を超える実力がありましたが、この「褒め言葉への対応」で、せっかくの成果を十分にアピールしきれていなかったんですね。
文化の違い:謙遜 vs. 自己肯定
この違いは、まさに文化的な背景にあります。日本では、過度な謙遜は「控えめさ」や「謙虚さ」として評価されることが多いですよね。しかし、英語圏、特にアメリカなどでは、自分の成果や能力を素直に認め、感謝を伝えることが「自己肯定感の高さ」や「自信」の表れと捉えられます。相手があなたを評価して言ってくれている言葉を否定することは、相手の評価を否定することにも繋がりかねないのです。
たとえば、Cambridge Englishの公式サイトでも、国際的なコミュニケーションにおける文化的感受性の重要性が説かれています。褒められた時に「Thank you」と返すのは、相手への敬意を示す行動でもあるのです。
基本の「き」:ネイティブが使う定番フレーズ
まずは、どんな状況でも使える、基本中の基本フレーズからマスターしましょう。これらを使いこなせるようになれば、あなたの英語表現は格段に豊かになりますよ。
1. シンプル・イズ・ベスト:「Thank you.」
これが最も基本的で、どんな相手にも、どんな場面でも使える万能フレーズです。迷ったら、まずはこれ!
- 例:
Colleague: "Great job on the report, Sarah!"
Sarah: "Thank you."
2. もう一歩進んで:「Thank you. I appreciate it.」
「感謝しています」という気持ちを、より丁寧に伝えたい時に使います。相手の行動や言葉に対して、具体的に感謝していることを示唆できます。
- 例:
Friend: "I brought you some coffee."
You: "Oh, thank you. I appreciate it."
3. 具体的に喜んで:「Thank you. I’m glad you like it.」
自分の作ったものや、自分が関わったことに対して褒められた時に使うと、相手も嬉しくなります。「気に入ってくれて嬉しい」という気持ちが伝わります。
- 例:
Guest: "This cake is delicious!"
You: "Thank you. I’m glad you like it."
4. 努力を認めてもらえたら:「Thank you. It means a lot to me.」
特に、自分の努力や大変さを理解して褒めてくれた時に使うと、深い感謝の気持ちが伝わります。相手があなたの頑張りをちゃんと見てくれていた、と感じられるからです。
- 例:
Boss: "I know you worked overtime to finish this project. Excellent work."
You: "Thank you. It means a lot to me."
よくある間違いとその回避法
せっかく褒められたのに、意図せず相手を不快にさせてしまったり、自分の評価を下げてしまったりするのは避けたいですよね。ここでは、学習者がよくやりがちな間違いと、その対処法を見ていきましょう。
間違い1:過度な謙遜(「No, no, it was nothing.」など)
これは、先ほども触れた文化的な背景が原因で起こりがちです。相手が「素晴らしい!」と思って言ってくれた言葉を「たいしたことないよ」と否定してしまうと、相手の判断力を疑っているように聞こえたり、自信がない人だと思われたりする可能性があります。
回避法:「Thank you.」の後に、少しだけポジティブな一言を添える習慣をつけましょう。例えば、「Thank you. I worked hard on it.」(ありがとう。それに力を入れたんだ。)のように、自分の努力に少し触れるのはOKです。これは謙遜ではなく、事実の共有です。
間違い2:沈黙・無反応
褒められても、言葉が出てこず、ただニコッと笑うだけ。これは、相手によっては「この人は英語でのコミュニケーションに慣れていないのかな?」と思われたり、会話を広げたいのに広げられなかったりする原因になります。せっかくのコミュニケーションの機会を逃してしまうのはもったいない!
回避法:どんなに短い言葉でも良いので、必ずリアクションを返す練習をしましょう。まずは「Thank you.」だけでも大丈夫。慣れてきたら、上記の定番フレーズを一つずつ試してみてください。
間違い3:褒め言葉をそのまま真に受けて、大げさに返してしまう
これも稀ですが、例えば「You're a genius!」と言われた時に、「Yes, I am!」と答えてしまうと、傲慢に聞こえてしまう可能性があります。相手は社交辞令や、軽い冗談で言っている場合もあるからです。
回避法:相手のトーンや状況をよく観察しましょう。もし相手が冗談っぽく言っているなと感じたら、「Haha, thanks! I try my best.」(ハハ、ありがとう!ベストを尽くしてるよ。)のように、ユーモアを交えて返すのがおすすめです。
実践!褒め言葉への返答練習ドリル
百聞は一見に如かず。実際に声に出して練習することが、何よりも大切です。ここでは、いくつかのシチュエーションを用意しました。ぜひ、声に出して、または友達とロールプレイングして練習してみてください。
ドリル1:仕事での成果を褒められたら
状況:上司があなたの作成した資料を見て、「This is excellent work. Very thorough.」(素晴らしい出来だ。非常に綿密だね。)と言っています。
- あなたの目標:感謝を伝え、自分の努力も少し匂わせる。
- 練習:
- 「Thank you. I’m glad you think so. I spent a lot of time ensuring all the details were accurate.」(ありがとうございます。そう思っていただけて嬉しいです。全ての詳細が正確であることを確認するために、多くの時間を費やしました。)
- 「Thank you. I appreciate you noticing the details.」(ありがとうございます。細部に気づいてくださって感謝します。)
ドリル2:友人からファッションを褒められたら
状況:友人があなたの新しい服を見て、「That’s a really nice jacket! It suits you well.」(そのジャケット、すごくいいね!すごく似合ってるよ。)と言っています。
- あなたの目標:感謝を伝え、その服への思い入れなどを軽く話す。
- 練習:
- 「Thank you! I just bought it yesterday. I’m happy you like it.」(ありがとう!昨日買ったばかりなんだ。気に入ってくれて嬉しいよ。)
- 「Thanks! I was wondering if it looked good on me.」(ありがとう!似合ってるか気になってたんだ。)
ドリル3:スキルや能力を褒められたら
状況:同僚が、あなたが難しい問題を解決したのを見て、「You’re so good at problem-solving! How did you figure that out?」(あなたは問題解決が本当に得意だね!どうやってそれを解決したの?)と言っています。
- あなたの目標:感謝を伝え、少しだけ解決のヒントを共有する(話したくなければ、感謝だけでもOK)。
- 練習:
- 「Thank you! I just tried a few different approaches.」(ありがとう!いくつか違うアプローチを試してみたんだ。)
- 「Thanks! I’m glad I could help. It was a tricky one.」(ありがとう!役に立てて嬉しいよ。難しい問題だったね。)
どうでしたか?声に出してみると、自然と口が慣れてきますよ。最初はぎこちなくても、繰り返すうちに、褒められた時に自然と「Thank you」と言えるようになっていきます。これは、まるで新しい単語や文法を覚えるのと同じプロセスです。
自信を持って「ありがとう」を言うためのマインドセット
最後に、テクニックだけでなく、心の持ちようについても少しお話しさせてください。褒め言葉を素直に受け取るためには、自分自身に対する肯定的な見方も大切です。
私の生徒さんで、以前は褒められると必ず「いえいえ、まだまだです」と言っていた佐藤さん(仮名)がいました。彼女は、ある時 IELTSのスピーキングテストで高得点を取ったのですが、試験官から「Excellent response. Your fluency is remarkable.」(素晴らしい回答でした。流暢さは注目に値します。)とフィードバックをもらったそうです。その時、彼女は反射的に「Thank you. I’ve been practicing a lot.」(ありがとうございます。たくさん練習してきたんです。)と返せたのです。これは、彼女が日頃から「自分の努力は無駄じゃない」「自分は成長している」と信じられるようになってきた証拠でした。この経験から、彼女は英語でのコミュニケーション全体に自信が持てるようになり、以前よりも積極的に会話に参加するようになったのです。
褒められたということは、相手があなたの良い点を見つけて、それを伝えたいと思ってくれたということです。それは、あなたという人間が持つ価値の一部を認められた、ということ。だから、その言葉を素直に受け取ることは、決して傲慢なことではありません。むしろ、相手の言葉を尊重し、自分自身も大切にする、ポジティブな行動なのです。
もし、まだ「ありがとう」と言うのに抵抗があるなら、まずは「Thank you.」だけでも良いんです。そして、少しずつ「I appreciate it.」や「I’m glad you like it.」といったフレーズを加えていきましょう。あなたの英語学習の旅が、さらに豊かで実りあるものになることを願っています!